いつかきっと忘れるけれど、傷はすぐには癒えなくて。


異変を感じた時には、もう既に彼の心は私の傍にはなかった。

いわゆる浮気というやつだ。


別に女性からのメールだとか、仲の良さそうな写真だとかを見たわけじゃない。本能だか女性の勘だか、なんかそんな感じのようなもので悟ってしまったのだ。

彼の長所である「素直」が短所に変わったのは、私が浮気を問いつめたときくらいだった。証拠はないのだから、いくらだって逃げ道はあったろうに。嘘をつかれるのは嫌だが、簡単に認められるのも癪だというのは微妙な女心である。


彼なら絶対しない、というほどの確信も自信もなかったから、落ち込みはしたが案外受け入れることができてしまった。もっと自信をもって彼を繋ぎとめていれば、というのも後の祭りなのだろう。

< 3 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop