いつかきっと忘れるけれど、傷はすぐには癒えなくて。


浮気が判明してから別れるまでは、そんなにかからなかった。
少しの間はお互い仕事が忙しかったのもあり、そのままになっていたが、ずっとそんな状態でもいられない。なにより一緒に住んでいるのだ。部屋の中の空気が悪くなるのは避けられなかった。


覚悟を決めた彼が、改めて別れ話をするために私と向かい合って座ったのが、本日ついさっきのこと。時間にすれば2時間前くらい。


「ごめんなさい。君より好きな人が出来てしまいました。俺はその人と一緒に人生を歩んでいきたいと思っています。俺のことをいくら憎んだって構わないから、俺と別れてください。お願いします」

深く頭を下げてそういった彼は誠実に見えた。
浮気した人が誠実に別れ話をするなんて、ものすごい皮肉である。


今更足掻く気にもなれない私は、ただ真顔で頷いただけ。もう言葉を発することすら面倒だった。

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