淡雪のように微笑む君を
「雪が融けるね」
突然君がそう言ったから、私も君が見ている窓辺を見た。
そこに映る景色は、彼が言ったものは違い、一面銀世界だ。
融けるも何も、雪は降り続いている。
酷くはないが、しばらく止みそうにもないのではないだろうか。
相変わらず君は、不思議なことを言う。
「降り止まないよ?」
そう君に言えば、君は視線を窓辺から私へと移すと、にっこり笑う。
「それでも、雪は融けるから」
「止んで、日が経つか、暖かくなればね」
さすがに、春になれば雪は融るね。
なんて言って笑いかけたが、彼は曖昧に微笑むだけで何も言わなかった。
その銀世界を見つめている瞳は、まるで黒曜石のよう。
長い間、この白い箱のような世界で暮らしていた君の肌は白く、身体も細い。
少し長めの前髪は、どこか翳りを感じさせてくる。
「希咲(きさき)?」
とても綺麗な響きを持つ彼の名を呼べば、呼びかけに応じた君は、小首を傾げて私に微笑む。
そんな彼が私は世界で一番大好き。
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