淡雪のように微笑む君を
「好きだよ。だけど、今は来ないで欲しいと思ってしまう」
彼は再び、未だに止まぬ雪を見ている。
「そうね、冬は花粉がほとんど無いものね。春になると苦しいからね」
あえて話を違う風に解釈し、勝手に答えた。
彼が望む答えをなんとなく私は知っていたけれど、知らないフリをした。
彼がその先に紡ぐ言葉を、今は消してしまいたかった。
聞きたくないから。
それでも、残酷なほどにまで優しい彼は、困ったように眉尻を下げて微笑む。
どうして彼は笑えるのか分からない。
その綺麗な笑顔は、嬉しい時にするものなんだよ。
辛い時、哀しい時にまで、貴方がそうやって笑うことを私は知っている。
知っていて、気づいていても、何も言わない。何も言えないの。
「好きだよ」
君は再びそう言った。
それは春が好きなのか、それとも私なのか。
自惚れてもいい?と言ったら、君はきっと笑ってくれるのだろう。