淡雪のように微笑む君を
「愛衣は、春は好きなの?」
春は好きかどうか?
好きか嫌いかと訊かれたら、私は好きだ。
彼に出会ったのが春で、結ばれた日も春で、私の生まれた日も春だから。
春にはいいことがたくさんあったのだ。
「………」
でも、今は好きと言えない。きっと、言ってはいけない。
だって、それは貴方が望む答えでしょう?
「ごめんね、花粉が辛いよね。毎年そうだよね」
答えに迷っていたら、君は前の私と同じように、分かっていても分からないフリをする。
最大級の、優しい想い。
もう切ないんだ。
君は全てを分かっていて、私がどう答えるのかも分かっているのに、分からないフリをするの。
苦しいんだ。
現実から目を背けているのと変わらない、この彼とのやり取りが。
「希咲は暖かい季節が好きだったね」
あえて過去のものにする。
きっと、今も好きだと思うけど。
降り続ける雪を見ながら、彼に気づかれないように一筋の涙を流した。
堪えきれなかった。