淡雪のように微笑む君を
「好きだったよ」
彼も同じように、過去のことだと言う。
それは、彼も私と同じことを思っていることが分かる、充分すぎる一言だった。
突然頬に冷たい感触が走る。
ハッとしてその正体を確かめるために、頬に触れれば、それは彼の手だった。
雪のように白く、ひんやりとして冷たい彼の指先が、私の目元を優しく拭う。
「泣かないで…僕はまた、君に巡り逢うから」
希咲は、淡雪のように綺麗に微笑んだ。
一番聞きたくなかった言葉を、彼は言った。
逃げていた現実を突きつけられたのだ。
その日は近く、遠くない未来であることを。
「泣いて、ないよ」
認めたくなんてない。そんな未来なんて、来なければいい。
ずっとずっと、貴方が幸せに笑えるのなら、私はどんなことだってするから。
だから、どうか、そんな綺麗に、優しく笑わないで。
「愛衣は、綺麗だから。嘘をつけない、心の綺麗な人」
遠回しに、私に“嘘つき”と言う彼。