breath
私は眠っていたようだ

目がさめると、ベッドの横に専務が心配そうに私の顔を覗いていた

「ーーーあっ、専務すいません」

忙しい専務がなぜ、私を付き添っているのだろう?疑問に思う……けど何も言えない

「身体は大丈夫?」
「あっ、大丈夫です。貧血だったみたいで……」

やっぱり私はここでも嘘をつく。藤崎さんとエレベーターが一緒で、気分が悪くなったなんて、口が裂けても言えない

「渡辺くんから連絡をもらった時はびっくりしたよ。部屋で話した時は普通だったから……」

「すいません」

本当に申し訳なく思う

「私の部屋を出てから、何かあったのかな?」

私の目をジッーと見つめて言う専務。私の心の中を見過ごされているようで、嘘がつけないと思った

でも、樹さんのことが関わっているから絶対言えない

「いいえ、何もありません」

専務は『フッー』と溜息をついたかと思うと、軽く私の頭を軽く撫でた

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