breath
「本当かな?君の顔は嘘をついているように見える。もしかして高宮のことかな?彼は女性関係の噂が多いからね……」
「ーーー専務……そのことをご存知なのですか?」

専務は……もしかしたら私の知らない樹さんの事を知っているかもしれない。それを知りたくて、私は敢えて聞いてみた

専務は私の顔を見つめながら

「知りたい?」

と聞くので、私はコクンと頷く

「わかった。ただ、ここでは人目もあるし話せない。あと1時間すれば仕事が終わるので、場所を変えてなら話す事ができるが、どうする?」

本当は、ここで断らなければいけないのはわかっていた。樹さんはわたしにとっても大切な人だから……

でも、ここで好奇心が勝ってしまう私。さっき専務室で言われた『騙されてない?』という響きが心のどこかで突き刺さっている

「お願いいたします」
「わかった、じゃあ就業時間は5時半までだったよね。終わったら専務室まで来てくれないか?」
「わかりました」

と言い、私達は自分の部屋に帰った

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