breath
専務の車で向かったのは、隠れ家的な割烹料理屋だった。

普通の家?とも思える装いの外装。入ってみると、やはり普通の家

専務は顔なじみのようで、そこの女将は

「匠ちゃん、珍しいわね。若い子を連れてくるなんて」

と専務を【ちゃん】付で呼ぶから、タダモノではないかもしれない。

部屋に通される。こじんまりした和室で、でも調度品はすごくセンスの良いモノを置いている。

私が物珍しそうに見渡していると、専務はクスッと笑いながら

「気に入った?」
「はい。こんな大人の店初めてなんで、キョロキョロしてすいません……」

大人気ない行動に反省した。

専務は車、私は病み上がりなので、お酒はなし。和食の懐石料理だから、少しお酒が無いのは物足りないというか勿体気分だ。

ーーーでも、今日は話をしに来たわけだし………

お酒を飲まない私達に女将は美味しいほうじ茶を入れてくれた

「ココの女将は幼馴染なんだ」

という専務。二人の距離感を見て、納得してしまった。
< 144 / 657 >

この作品をシェア

pagetop