breath
『樹?』

今、専務樹さんの名前、呼び捨てにしたよね……。普通、呼び捨てをするってことは、近い存在であるんだ

「樹さんは専務の部下なんですか?」

私の質問にキョトンとする専務

「何で?」
「下の名前を呼び捨てされたから……」

「ーーーーーー」

専務が無言になった。何か考えている様子

「ーーーー知らないの?」
「何をですか?」
「樹が僕の従兄弟ってこと」

いとこ……?そんな話は初耳だ。ーーーーってことは、樹さんは加藤一族の一員……ってことだよね……

「しっ、知りませんでした」
「本当に?」

コクント頷く

「樹と結婚話が出てるんだよね」
「ーーーーー」

もう言葉が出なかった。婚約者と公式にも名乗っている私が、樹さんの素性を知らないなんて……普通ありえないこと……

「だから聞いたんだよ。騙されてないかって」

「ーーーーはい………」

溜息と共に出た、返事。この二文字を言葉にするだけで精一杯だった。
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