breath
「やっと笑ってくれたね」

優しい目で、微笑みながら言う

「そうですか?私も、笑うの久しぶりだな……って思ったんです」
「笑わなくなった、理由でもあるのかい?」

優しく話を聞こうとしてくてる専務に、今の私は偽る事ができなかった

私は専務に本当の事を素直に話した

ひったくりに遭った事、犯人が中学の頃の元彼の可能性があり、再犯を恐れて自宅に住む事ができなくなった事。樹さんと中学の時同じクラブで親同士が結婚を決めた事。

そして藤崎さんのこと……

すべての話を聞き終わった時、私は専務の口から同情や哀れみの言葉が漏れると思っていた。

私の思いを裏切り、専務は

「望月さんはどうしたい?」

と私の希望を聞こうとする

「君が樹と結婚するのは、それはそれで良いと思う。ただ、私の目から見て二人はまだ若い。普通の一社員としてなら、それでも良いが、将来会社を背負うであろう樹の妻には力不足だ」
< 150 / 657 >

この作品をシェア

pagetop