breath
就業時間が終わり

「望月さん今日は上がっていいよ」

と溝口室長が声をかけてくれた

私は「お疲れ様でした」と言いながら、部屋を出る

専務は忙く、室長はまだまだ帰れそうにないようだ

「あーー疲れた」

部屋を出てからの第一声。慣れない仕事だから、疲れがたまる

服を着替え、役員専用の入り口から出るので、一般社員とは全く接触がない

更衣室も他の秘書課の人は仕事をしているようで、私は一人ぼっちだった

今までとは違う環境で寂しい気持ちがあるが、そこは諦めるしかない

出口を出て無意識に向かう方向は、駅とは反対の樹さんのマンションの方向

私はブルンブルンと首を横に振り、「違う違う」と一人呟き、駅の方向に足を進めた


駅の手前の場所にあるコーヒーショップ

ガラス張りの造りで、おしゃれな佇まい

仕事に疲れていた私は、糖分を摂取したい気分で、迷わず店の中に入る

座った席は、駅が見える窓側の席
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