breath
「樹さんは?」

社交辞令の言葉を口にする私。本当に聞きたいことはこれじゃないのに……でも、それを聞いてしまうと、私達の関係が終わるような気がして、怖くて聞けなかった

「今から会社に帰るとこ」

クスって笑いながら言う

「体調は大丈夫?」
「おかげさまで。だいぶよくなりました」

私の顔は引きつっている?

私は……樹さんに求められたい。樹さんのマンションに戻ってきて欲しいって言われたい。

その言葉を待っている

樹さんも同じ思いですよね?

ジッと彼の目を見つめながら言っているけど、樹さんは

「よかった」

の一言で全て片ずけ、私の頭をクシャって軽く触り

「じゃあ、仕事残っているから」

って店を出て行った

今後の事とか、藤崎さんの事とか何も言ってくれない

もしかして……ヨリを戻した?

また、あの不安が私を襲おうとする

私はブルンブルンと首を横に振り、邪念を振り払おうとする
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