breath
そんな狡い私の気持ちがなかったように、樹さんは優しく私と接してくれる

ーーーというか、藤崎さんが例えマンションの前に待ち伏せしていたとしても、彼女の姿が目に入っても、彼は私に優しい

いつも何事もなかったかのように接してくれる

それから、私達はたわいのない事や、将来の事を話した

キラキラ瞬くパノラマの夜景と美味しい料理。

高級なワインを飲みながら過ごすこの時間は贅沢だ

今日は二人の記念日となる

一生、忘れられない……

そんな価値ある今日の日に、藤崎さんの事がどうなったのかを聞くことができなかった

彼女の存在が、私達のこの素敵な時間、空間を汚すように思えたから

今日だけは止めておこうと思った

二人の出発の日だから


食事が終わり、デザートが運ばれる前に私からのプレゼントを渡す

樹さんから貰った指輪からしたら、比較にならないぐらい安いけど、私なりには一生懸命選んだネクタイなので、気に入ってくれるかな……

ちょっと不安です
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