breath
社長はせっかく苦労して黒字化にもってきたこの会社を事業の中枢として置いておきたいと考えているが、高宮社長は利益があるうちに売却することを望んでいる。

対立している二人

今、加藤社長は解決の糸口を模索し、本社に頻繁に通っている

二年前までは加藤社長の片腕として支えていた溝口室長は本社に残り、秘書室を統率する傍ら、本社の情報集めをしているので、こちらでは私が第一秘書となる

「来週から、アメリカ帰りの二人が異動してくる」

運転しながら、社長がポツリと言う

いつもと違うのは、無表情で感情を出さないようにしている

「そうですか。珍しいですね。人事からではなく、社長の口から直接異動の話をしてくるなんて」

社長はフーッと溜息を吐き

「高宮社長の刺客みたいなものだよ。この二人、アメリカ支社の時には高宮社長の片腕として動いていたらしいし」

「そうですか……。名前をご存知ならば教えていただきたいのですが」

私は手帳を開き、社長に尋ねる
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