breath
異動してくるのは二人と聞いている

もし、樹さんだったとしても部屋に二人きりになることはないだろう

平常心、平常心……心に言い聞かせるけど、ドキドキ心臓の音が身体中に響く


それから数分後、ノックの音が聞こえた

私が社長室の内側からドアを開けると、中年の人事部長の姿が目に入る

「望月さん。急で申し訳ない。昨日帰国したからまだ休暇中なのに、社宅を探しに早速こちらに来てくれた。今日は急がないらしいから、社長の都合がつくまで待っても良いとの事だ。」

「かしこまりました。」

部長の後ろには背の高い男性が一人いる。彼が部長の隣に移動した

ーーーその瞬間、私の時間が止まったかのようにスローモーションのように景色が動く

「こちらは今度経営企画室のマネージャーになる高宮君だ」

樹さんは私の顔を見ると、軽く会釈をした。

表情は変わらない

「では望月さん頼んだよ」

と言い人事部長はお忙しいのか、用件だけ告げさっさと行ってしまった
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