breath
「大丈夫か?」

そう声がしたけど、私は振り向かなかった

ーーーたぶん振り向けなかったんだと思う……

その後、私の横で人がいる気配がしたので顔を上げると、社長が心配そうに顔を覗きこんでいた

そして……彼は私を抱きしめる

彼が私を抱きしめるのは、私への愛情とかではなくて慰めのもの

私がいつも不安な時……

誰かに側にいて欲しい時……

いつも社長が側にいて寄り添ってくれる

彼に甘えてばかりではいけない事はわかっている

でも……せめて今日だけ……今日で終わりにするから……そう心の中で呟いた

私が顔を上げると社長の顔が見えた

「ーーー聞いて……くれたんですね……」

私は今できる精一杯の笑顔を社長に見せる

私の顔を見ると、少し安心したのか私に巻き付いていた腕が離れた

「コーヒーでも入れますね?」

私はキッチンへ行きコーヒーメーカーをセットする

少しでも平常心で話を聞けるように……

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