breath
樹さんの顔を見上げると、水滴が顔についた

これは涙……?

樹さんは腕に力を強め、ギュッとキツく私を抱きしめる

「ーーー樹さん……」

私が名前を呟くと

「明日美……俺を待っていてくれたんだね……」

そう言い、その後は鳴き声が聞こえる

私は樹さんを待っていたのだろうか?

ーーー忘れようと努力はしたけど、全てを忘れることはできず心の隅で彼の影が疼いていたのは確かだ

男性関係がご無沙汰なのは待っていたのではなく、縁がなかったため……っていうか、恋愛が怖かったというのが事実

でも、さすがに否定できない……と思い、抵抗もしないで樹さんに抱きしめられている

このまま朝までこの状態なのか、これより先に進むのか……

私の心の準備ができていないのは確かで、樹さんは……泣いているのでわからない

私は、もしかしたら求められる?……ってドキドキしながら彼の身体にしがみついていたけど、その後は眠りに入ってしまう
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