breath
いつも通りに歩いていると、すごいスピードで自転車が角を曲がってきた
ぶつかる瞬間がスローモーションでコマ送りのように流れていたのを覚えている
普通はコーナーを曲がるときは、ブレーキをかけるのが普通だが、その自転車はそれもせず私を目がけて突進

思い出すだけでも、恐怖を覚える
手が震えてきて、冷や汗が出てきた
怖い
怖い
怖い
恐怖のあまり、眼から涙が浮かぶ
私の中でフツフツと、あの時の怖さが蘇ってきたのか、心臓がドキドキしてきた
唇が震え、自分の両腕で自分を抱きしめる
顔面から血の気が無くなるのがわかり、私は無意識に泣き出してしまう
人目も憚らず
その時、私に付き添っていたのは高宮主任だけ
フッと柑橘系の香水の匂いが私を包んだ
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