breath
「でも……お父様が……」

前田さんとの結婚を望んでいる……と言いたかったのに、信号待ちでブレーキを踏んだ樹さんの唇が私の唇を塞ぐ

ただ、信号待ちの間

唇を重なっている時間はわずかだった

信号が変わり、車が動き出す

「明日美、前田の祖父は頭取だったけど、先月退任したから現在の頭取は別の人。だから結婚してもメリットなんか全くないし、彼女との政略結婚はありえない」

「そうなんですか」

「ちなみに匠さんも政略結婚じゃなくて恋愛結婚だった」

「嘘?」

てっきり、そうだと思っていたから……意外だなと思った

「前田は一族のつまはじき者。優秀だったら銀行の縁故で就職できるだろう?それもできなかったんだから……泣く泣く匠さんを頼ったんだよ」

「だから、明日美は俺について来れば良い」

昔と違い、少し力強くなった?……と思えるのは気のせいだろうか?

その後、夕食の買い物をするためスーパーに立ち寄った
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