breath
「でも……会社がこんな状態なので、樹さんも忙しいのでは?」

話を逸らそうとしている私に

「事業売却の件?」

私が頷くと樹さんは軽く笑い、私の頭をポンポンと軽く叩く

「それなら年内に解決するんじゃないかな」

あっ、そうだ……樹さんは高宮社長の刺客だった

ーーーだから、たぶん売却の事を指しているいるんだと、業務に疎い私でも何となくわかった

私は加藤社長の秘書

社長は売却反対派だ

私は彼に膨大な恩をもらっている

だから恩返しをしなければいけない

「それはこの事業を売却するから……ですか?」

私がそう聞くと、樹さんはクスって笑い

「その先は企業秘密。明日美は匠さんの秘書だから婚約者だからといっても、言えない事もある」

「そうですか……」

残念そうにする私に

「だから結婚して、匠さんから切り離したいんだ」

「それって、結婚退職するって事ですか?」

「そのつもりだけど」

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