breath
優しく微笑みながら樹さんは言うけれど、私の内情は複雑だった

社長はこの工場の生産している商品を愛している

だからこそ、売却しないように持って行く為、寝る時間も削って仕事をしている

この2年間傍でそれを見ていて、社長を支える仕事を生きがいとして今までやってきた

突然、私の前に現れ、私から結婚という形で仕事を奪おうとする樹さん

「樹さん、今は仕事を辞めません」

はっきり、自分の意思を伝える

「何で?そこまでして、匠さんと一緒にいたい?」

樹さんは私と社長の関係、何か誤解している?

「この2年間、社長は私を暗闇から救い出してくれて守ってくれました。私は社長にまだご恩返しを何一つしていないんです。だから……それが終わるまでは結婚しません」

私の思いを聞いた樹さんは

「やっぱりな……匠さんと明日美は……」

小さな声で何かを言った

その内容は私の耳に届かなかったけど……
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