breath

そう社長に言われた樹さんは、社長を睨み
「匠さんの言っている事は業務上ですよね？それならばセクハラです」
冷静にでも嫌味のように冷たい口調で言う
「何を言っているんだ。プライベートに決まっているだろう」
「冗談はやめて下さい。明日美は俺の婚約者ですよ」
そう言い、樹さんは私の側に来て腕を掴み引き寄せる
「そう言っているのはお前だけじゃないのか？」
「匠さん……言っている意味がわかりません」
私の腕を掴んでいる樹さんの手が汗ばんでいる
社長が言った事に動揺しているの？それとも私の気のせいなのか？
「婚約者ならそのような行動をしろ。お前が原因で過呼吸になるなんてシャレにならないだろう？」
「俺が原因？明日美、本当なのか？」
こんな展開になるのは想定外で、答える事ができず俯くしかできなかった
どうしよう。まさか前田さんと一緒にいたのを見て約束した助手席に乗った彼女を見て、それがストレスになって過呼吸になったなんて、恥ずかしく言えない
私は八方塞がりな状態
苦しくて
どうして良いかわからず、私の膝にポタポタ涙が落ちてくる
「樹、明日美を追い詰めるな！お前が何かは知らないが、明日美との約束を破った。それが明日美の過呼吸の原因だ」
「約束？」
たぶん、樹さんは気付いていないのだろう
深く溜息を吐き額を手で押さえ考える
「樹、お前は何で気付いてやれないんだ？明日美は二年前お前に傷つけられてボロボロになり病気に。今だってやっとここまで治った。そんな明日美に寄り添いたいのなら原因を作ったお前が覚悟を持たなければいけないんじゃないか？」
社長は私の代わりに大便してくれている