breath
社長と樹さんは立ち上がり玄関に向かうので見送る
さすがに樹さんの顔は見れない
二人がドアから出ていった時、私は膝から崩れ落ち玄関にペシャッと座り込んでしまう
いろんな思いや、どうして良いかわからない私がいて自然と涙が溢れ出す
でも、ここは玄関
声が漏れてしまうので、声を殺して泣くしかできない
本当に馬鹿な私
どちらにも、これ以上の助けを求められない

それから数分後、玄関のドアが開く
「明日美」
私の名前を呼ぶ声が聞こえ、フワッと抱きしめられる
樹さん
樹さんは何も言わず彼の胸に私の顔を埋めさせ頭を撫でる
言葉もなく音のない空間でひたすら泣かせてくれる
ぜここに戻って来たのか理由がわからない。でも私のためである事は確かな訳でそんな樹さんの気持ちが嬉しかった

どれだけ泣いただろうか
涙でぐちゃぐちゃになった顔を上げて樹さんの顔を見上げる
「ごめんなさい」
私が樹さんを独占したいと思ったエゴで、過呼吸の発作だってそれが原因
全て私が悪い
「明日美ごめん。俺が追い詰めてしまって」
樹さんが謝る言葉に胸がチクチク痛む
辛い
私はどうしたら良いのだろう?
いろんな過去のしがらみや病気
私の醜い心がうまくいかない方向に導いている
最低な女
樹さんが私に罪を感じ下手に出ているのを利用しているだけ
こんなんじゃ何も上手くいかない
私は樹さんの身体から離れ
「ごめんなさい。私は樹さんの私に対する優しさを利用していました。樹さんが他の人と結婚されるのが嫌で繋ぎ止めようと我儘を言っていました」
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