breath
16
その日の朝食は食欲のない私には拷問に等しいもの
身体中が食べたくないって拒否している
ここ二年、食欲に関しては感情任せでその結果が今の体型
このままではいけないとは思っているけど正すことができない
樹さんは、そんな私の正面の席に座りたわいもない話をする
普通の家族みたいに
そこには温かいものがあり、過去には私の周りにもあった
でも今は病気にかこつけて手放した
そんな事を思っていると、自分の中でいろんな思いが溢れ出してきて・・・涙がこぼれ落ちる
樹さんはそんな私を同情したのか優しいいつもの笑顔で微笑みかけてくれる
懐かしく愛おしく思ったことがあるこの笑顔
この人をなぜ、こんな風に人を疑うことしかできないのだろう?
そう思うと気持ちが憂鬱になってくる

いっこうに食事のペースが上がらない私に樹さんは「ア―ンして」と優しいいつもの笑みを浮かべながら食べさせてくれる
普通の人ならこの瞬間が幸せだと思える時間だと思えるのだろうが私には拷問としか思えない
二年前には全くなかった感情
私の心はどうしてこんなにも病んでしまったのだろう?
優しくしてくれる樹さんが目の前にいるだけで自分の醜さが恥ずかしく思う
朝食はさすがに全部は食べれなかったけど何とか半分くらいは口にすることができた
「今日はどうします?」
「買い物に付き合って。一緒に住むのに足りないものもあるし」
寝具も備付けの物がある、あえて急いで揃えるものはないようには思えるけど
さすがにその言葉は口にできず二人で買い物に行く事になる
行き先は近くの大型ショッピングセンター
< 475 / 657 >

この作品をシェア

pagetop