breath
周りの人から見ると恋人とか夫婦に見えるだろう
片田舎にある唯一の大きなショッピングセンターだから会社の人もきっといるはず
誰も会わない事を祈りつつ人混みが交差している通りを歩く
向かったのは寝具売場
寝具一式を新調するようだ
私の住んでいるマンションは創業者一族の所有の物で長期出張用に使用する目的で購入したと聞いている
社長一族は10階を使用しているのでたぶんこの部屋は一族のために宛がわれた物だろう
洗濯はしているとはいえプライベートで他人が使用したものを毎日使うのは嫌と思う
私も越してきた時に、買い替えたから
樹さんの気持ちもよくわかる
でも私は密かに樹さんは、私の部屋で一緒に寝ると言い出すと思っていた
二年前の彼がそうだったから

「樹さんは一人で寝るんですね?」
「明日美が許してくれるなら、毎日一緒に寝るよ」
見上げると樹さんの笑っている顔
これって私が誘っているように見える?
そう思うと恥ずかしく思い顔が真っ赤に
私達の間に会話が無くなる
でも樹さんはさりげなく、手をつなぎ指を絡めてくる
ずっと触れ合っていたい
そう思った

私達がショッピングセンターを歩いていると知ってる顔がチラホラ
同じ会社の工場の人達だということはわかる
工場は休日も稼動しているので、恐らくここに来ている人は公休の人達だ
私達はある意味会社では有名人
私達の姿を目撃すると驚いた表情になっているのは気のせいだろうか?
「樹さん、明日は噂が広まりますね」
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