breath
一応まだ他人だし
仕方なく樹さんのお母様に連絡するといつものハイテンションの明るい声が電話の向こうから聞こえる
事情を説明すると保険会社には連絡しておくとのこと
加害者とのやり取りは高宮家の顧問弁護士がするので私は一切かかわらないで良いし、会社にも社長夫人がそう言っていたと伝えておけと言われた
お母様の口調はとても慣れているようにも感じる
恐らくお母様も色々嫌がらせを受けていたのかもしれない
電話を切り駆け付けた総務課長にその話をすると嫌な顔をされる。、弁護士を立てる事を止めさせられないかとも
総務課長は当り障りのないように留めておきたかったのだろう
犯人は見つけるのは確実で子会社のゴタゴタを本社に、それも売却推進派トップの社長に知られたくないだろう
あーそういえば彼も現地のコネ入社の人だった
「この車は私の所有の物なら可能なのですが高宮の物ですから私では判断しかねます。ただ課長から奥様に説得されるようでしたら顔繋ぎはいたします」
と私が言うと「それだけは、止めてくれ」と慌てた
今、この会社現状で目立つ事はしたくないのだろう
所詮課長もサラリーマン
自分を守るだけで精一杯で犯人を守る余裕はなさそうだ
「犯人も高宮の車だとわかってやっているからたちが悪いですね」
社長の時は穏便に済ませたけど今回は保険を使う場合保険会社や警察に連絡するのは必須で、穏便に済ますなら自腹?
傷も深いし範囲も広い。きっとそれなりに金額はかかるだろう
犯人を庇うために私が全額、自腹を切るのも。さすがに嫌だ
それならば保険を使って来年アップする保険料の差額分を私が負担する方が納得がいく
「高宮課長が不在だし、庇えないよ」
課長が寂しそうに呟いた
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