breath
頭の上から樹さんの泣き声が聞こえる
樹さんはなぜ泣いているのか私には検討がつかない
私は睡眠薬を飲んで眠っていただけになのに
眠りたい気持ちと不安の気持ちが溢れ出て自分の中では消化しきれなくて、その思いを押さえるためにビールを飲んだだけ
それから数分が過ぎ樹さんも落ち着いついてきたようでフワッと樹さんの身体が私から離れた
私は樹さんの顔を見上げると泣き顔が見える
でも今の自分の現状をどう話していいのか、あまりにも出張中に起こった事が多くどれから説明していいのか戸惑ってしまう
考えたあげく私の口から出た言葉は
「大丈夫・・・」
心配かけまいと強がって言った一言
「そんなにやつれて。急激に痩せて。大丈夫な訳ないだろう?それにあの手紙」

樹さんはあの郵便物を見たんだ
二日前、やっと行ったコンビニの帰り覗いたマンションのエントランスにある郵便受け
最近、宛て名無しの不審な郵便物が届いていたので取りに行くのを億劫にしていたけど、その日は何も考えず取り出してしまった
部屋に帰り差出人のない切手の貼っていない郵便の一つを無意識に開ける
A4サイズのプリンター用紙一面に【死ね】の文字が敷き詰められて印刷された手紙
それを見た私は闇に突き落とせされたような衝撃を受ける
あっ、そうだ・・・私は不必要な人間なんだ
ここにいてはいけない
生きていたらいけない
ネガティブな感情が私の中を掻き乱す
私は・・・
私は・・・
私の中の黒い塊のような感情が嗚咽になって、涙が枯れるまで泣きつづけた
たまたま死を選ばなかったのはもう一度だけ会いたい人がいたから
その人に会えるまで・・・
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