breath
樹さんはスマホを手に取り別室で電話をかけている
それから数分後、社長が慌てて部屋にやって来た
「明日美!」
私の悲惨な姿を見て社長は苦しそうな表情をする
樹さんが差出人不明の10通以上ある郵便物を社長に差し出した
「匠さん今すぐ明日美を病院に連れて行きたいから主治医と連絡を取ってほしい」
社長は私がこうなった事情を私に聞き取り、私の主治医で社長の友人でもある田村先生に電話をかけた
電話を切った後社長は樹さんに私の入院準備をするよう指示し社長は会社の誰かに連絡をしている
帰国してお疲れなのに、二人とも私の為に手間を増やさせて申し訳なく思う
社長が私を田村先生の元に連れて行ってくれるのかと思っていたけど、今日は樹さんだけで連れて行くようだ
駐車場に行き樹さんが自分の車に乗り込もうとした時、会社でつけられたドアの傷に気づいたようだ
「ごめんなさい。私の不注意でやられてしまって」
樹さんの悲しそうな顔を見ると私のせいで・・・涙が溢れ止まらなくなってしまう
樹さんはそんな私を抱きしめ
「今日は二人でゆっくりして明日病院に行こう」
と言い二階の部屋に戻る
部屋に戻ると社長が手紙を見ている
樹さんは事情を社長に話し私を寝室に連れて行く
「何か食べたい物はある?」
私が首を横に振ると頭をポンポン軽く叩きいつものように私に優しく微笑みかけてくれる
その顔が・・・ここ数日孤独と闘っていた私には眩し過ぎて目から涙が溢れ出す
樹さんは、ただそんな私を抱きしめ「ごめん」という言葉が私の頭から降ってきた
私の様子が落ち着いた頃樹さんはキッチンに行き温かいココアを入れてきてくれる
数日ぶりに胃に入れる温かいもの
少し安心した気持ちになる
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