breath
「おいしぃ」
社交辞令ではなく心の底から自然と出た言葉
その言葉を聞いた樹さんはホロッと涙ぐむ
「お粥なら食べれる?今炊いているからもうすぐできるよ」
樹さんの言葉が
私に向けられる優しさが
完全に干上がっている私の心に水を与えてくれて少しホッコリした気分になる
インターホンが鳴り誰かが来たようだ
こんな惨めな姿なのに人前に出られない
私が思っている事を樹さんは察知したようで
「弁護士の先生と人事部長を呼んだようだけどこの後10階で打ち合わせをするんだって」
この部屋の来客ではない事を告げる
その後は樹さんにお粥を食べさせてもらい一緒にお風呂に入る
本当は痩せた身体を見られたくなかったので一人で入りたかったのに「心配だから」と譲ってくれなかった
私の痩せこけた身体を見た樹さん
きっと幻滅しているだろう
樹さんに身体を洗ってもらいシャンプーもしてもらう
お互い裸だけれど・・・性的な行為は一切ない
これはある意味介護
鏡に映った私の顔はやつれていて悲壮感が漂っている
身体も以前抱かれた時よりも痩せ細りガリガリだ
こんな女抱く気になんてなれないよね
絶対、幻滅されている
樹さんは洗い終わった後先に湯舟に入り私にも入るように促す
私は言われるがままに入り樹さんを背もたれにして座った
樹さんは私の両手を握り樹さんの顔が首筋にあり息がかかる
一人でドキドキしています 
それに樹さんの足の間に座っている私に生理現象?が私のお尻に当たっている
私はこんな身体でこんな状態なのに・・・女として彼に受け入れて欲しい自分がいる
これが性なのかもしれない
情けないけど
私は樹さんの顔を見つめ「ありがとう」と言った
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