breath
その日の晩は樹さんは病室に泊まる
「本当は同じベッドで抱きしめながら眠りたいけど看護師さんに怒られそうだから止めておく」
って言いながら狭いサブベッドで寝る樹さん
本当に申し訳なく思う


それから5日後私は退院した
体重が少し増えたというだけで鬱病の治療は続く
社会復帰はまだ無理らしい
樹さんは残りの4日間も私の病室に泊まった
どう考えても彼にとっては負担としか考えられなかったけどそれを微塵とも感じさせないように戻って来た時は「会いたかった」と言い抱きしめてくれた
いかにも、愛おしい人と再会したように
ひしひしと彼の優しさを感じる
看護師さんも、そんな健気な樹さんを見て
「望月さんは幸せですね」
って言ってくれる
私達はよそから見たら幸せそうなカップルに見えるんだ

樹さんの私に与えてくれる愛情が嬉しく思う反面、2年前に苦しんだ自分が置き去りになるのが否定されているようで辛い
病気を患う前の私だったらグズグズ考えず前を見て進んでいたのに、今の私は勇気を振り絞って前に進む事ができない
そんな気持ちが素直になれない一因なのか
そして気が重くなっている原因をさっき知ったから。なおさらブルーになっている
私は退院後に帰る場所は実家だと思っていたのに
なぜか私のいないところで両家で話し合いが行われ樹さんの実家で療養することになった
理由は樹さんが毎日私が会いたいが為に自分の実家に寝泊りして毎日私の実家に通うのは仕事の都合上遅くなる為と、私の母がパートが忙しくて看病ができないと言っているから
だって二年前は母がパートに行っていても実家で療養していたから
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