breath
「私はね正々堂々と樹と闘いたい」
「正々堂々?」
「明日美に選んでもらえるように」
社長は立ち上がりバスルームに行ってしまう
掃除を始めたようだ
キッチンに行き冷蔵庫を開けるとローストビーフ、シーザーサラダ、私の好きなカマンベールチーズなどが沢山入っていた
実は樹がこの地に来るまでは週末によく社長とこうして家飲みをしていた
家族のいないこの地にやって来た私が淋しがらないよう気にかけてくれたから私は何とかやっていけた
酔い潰れて泊まったこともある
普通に考えたらそれの延長で送別会と思えば納得するけど昼の件が
それだけが気がかりで、一線を越えたかどうか確認ができていない
それだけは確認したい
お風呂掃除が終わった社長はキッチンで夕食の準備
私も手伝うと言っけと「お湯が入ったら先にお風呂に入って」と
言葉は優しいけど全く私の意見は聞いてくれない
自分の部屋に戻りたい
私のために家飲みの準備をしてくれる姿を見たら何も言えない
仕方なくバスルームへ
鏡に映る自分の姿を見てビックリ
胸のところにキスマークが
どんな意味?
考えるだけでも顔が真っ赤
社長は私のこと
本当は知っていた
彼の気持ちを
気づかない振りをしていた
そうしないと仕事ができなかったし、樹が不在の時は恋愛恐怖症だったから
彼は私の傍にいたから知っていて手だしをしなかった
なのに今それを破るなんて
きっと本気なんだと思う
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