breath
「外国に行ってしまって全く連絡がとれないんだ」
「豊田、口説くんじゃないわよ!この子、この年で男慣れしてないんだから。こんな様子じゃ男に丸めこまれちゃって騙されてもおかしくないでしょう?だから男慣れするように協力して!」
「騙されそうですね。騙したくなります」
「そうでしょう?だからヨロシクネ」
「彼女がいるのに他の女を口説いていていいのー?」
「憧れの望月さんが近くにいるんですよ。いざとなったら彼女を捨てますよ!」
「キャー最低!彼女にチクるわよ」
美奈子先輩も豊田くんも笑っている
流石です!
上手に男性をあしらっている
私は?
こんなにうまく交わせないし相手の言いなりになっている
樹の時も専務の時も
「高野さん来年結婚ですよね。年貢の納め時ですね」
「おめでとうございます。相手は?」
「早坂に決まってるでしょう」
先輩と早坂さんは私が入社した頃には付き合っていた
もう6年以上は
ずっとお互いの側にいて理想的なカップル
私は・・・樹なんか恋愛を通り越して婚約から始めたこの3年弱の時間
どれだけ私の側にいたの?
半年にも満たない
私って何?
そんなことを考えていると悲し過ぎて目から涙
私が急に泣き出した姿を見てオロオロしている豊田くんと何かを考えている美奈子先輩
先輩の指示で豊田くんと早坂さんの席がチェンジ
角席に私は追いやられ4人席は私達3人に
私が泣き止むのを待っている先輩と早坂さん
泣き止むとすぐ
「すべて隠さず話してもらうから!」
先輩はスゴイ形相で私に迫ってくる
観念せざるを得なかった
藤崎さんのことから始まり、子会社で嫌がらせを受けたことまでを洗いざらい話す
そして専務のことも
二人は真剣に話を聞いてくれた
今まで誰にも話せず自分で解決していたのに人に話すことで気持ちがスッとすることなんて
ウジウジ悩んでいた自分が馬鹿みたいに思える
私の話を聞いて深刻な表情の二人
早坂さんが泣いてるし
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