breath
「高宮は好きな人がいてその人が本命って聞いたことがあったかな」 
「相手は誰なんですか?」
今まで黙って亜美と山下さんを見守っていたのにそこだけは自分で聞いた
「相手は誰だかは教えてくれなかった」
「それより望月さんって彼氏いるの?」
山下さんが突然話を変えてきたけどどう答えて良いかわからない
「明日美、可哀相なんです」
亜美が名前は出さなかったけど遠回しに樹さんのことを話した
海外に行って連絡が取れなくて部屋には浮気の跡があったのを目撃したことも
「別れるの?」
山下さんの問いに私は答えられない
山下さんと二人で話したい亜美は隣に座っている田中さんに私の相手をするように仕向ける
私は田中さんと世間話
亜美と話しているはずの山下さんが急に話に入ってくる
隣に座っている亜美は不機嫌な顔をしている
仕方なく席を外し化粧室に向かう
私がいない方が丸く収まる
このまま帰るのも社会人失格のような気が
店の外に出て深呼吸をして気分を落ち着かせて部屋に戻る
部屋に入ると亜美と山下さんが仲良く話している姿が
私は山下さん以外の三人の男性がいるグループの中に入れてもらう
亜美の友達ともう一人の女性が一瞬イヤな顔をしたように見えたけどここは仕方ない
終わり時間まであと40分ここでいさせてもらおう
といっても自分から話す事もなく聞くことに徹した
今の宙ぶらりんの状態で動いてしまっては相手に失礼
鳥かごから出た今の私はリハビリをしているだけたから
今日はアルコールを控えようと思っていた
話を聴くだけでは手持ちぶさたでチョビチョビ飲んだけどかなりの量
会が終わる頃には顔が真っ赤になっていた
やっと終わった
私以外の人は盛り上がっていたので二次会に行くだろう
会計を済ませ亜美の耳元に「帰るね」と小さな声で囁き踵を返し駅に向かう
やはり今の私には場違いだと思うし相手にも無愛想で失礼
反省点が一杯だ
「望月さん」
名前を呼ばれたので振り向くと山下さんが立っていた
「二次会に行かれたと思っていました」
「明日から出張で朝が早いから抜けさせてもらったんだ」
「そうなんですか。お忙しいんですね」
「本当は急に来れなくなった奴の代理」
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