breath
言葉に詰まる
樹の友達がこんな人
学生時代につるんでいた樹も
比べてしまう
私の知っている樹は山下さんが話す人とは違うけど本当の樹は?
そんな事を考えていると思い浮かぶのは社宅のあの乱れたベッドの跡
山下さんの話している樹ならばやっていてもおかしくない
「山下さんも私をおもちゃ扱いなんですね」
「彼氏からおもちゃ扱いされたの?」
「おもちゃっていうか見た目とか扱いやすさとか」
「俺から見たらそれは明日美ちゃんの魅力だよ!」
「明日美ちゃんそんな事で悩んでいるんだ」
山下さんは私の頭を撫でる
樹の手の感触と違う
山下さんが偶然、樹と同じ事をやっただけなのに
なぜか樹と比べてしまう
そんな事を考えている自分が惨めに思えて、何気ないこんな行為でも樹を思い出してしまう
私は彼に支配されている
目から涙が浮かぶ
突然泣き出した私を見て山下さんはアタフタしている
「山下さん明日美を泣かしている。何やったんですか?」
前に座っていた亜美は慌てて立ち上がり山下さんを退かし隣に座¥る
「何もやってない!急に泣き出したんだ」
「そういえばさっき望月さんにボディタッチをしていたよな」
「そんな事したの。そりゃ泣くわ。山下さん、明日美は箱入り娘なのよ。取り扱い気をつけて下さいね」
私が泣いたおかけで山下さんが悪者に
申し訳ない
病気になってから涙腺が弱くなり些細な事でホロリと泣いてしまう
「すいません」
「こいつ好きな子以外はキツイから。高宮は博愛主義だから皆に優しかっけど」
峰山さんが取り繕うように言うけど、完全に山下さんを庇っていない
樹の話が出たのはきっと私達が同じ会社だから
たぶん峰山さんも私と樹の関係は知らないだろう
「でもねー誰にでも優しいのも問題よね。高宮主任は前科があるし」
「じゃあ高宮より俺の方が良い?」
「私は高宮主任より山下さんの方が良いですよー」
笑いながら亜美が言う
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