breath
「どんな人かな?」
期待が膨らんでいるのかワクワクしている姿が一目でわかる亜美
「山下さん来た」
私は入口から背を向けているので、後ろを振り返ると山下さんとその後ろに山下さんより少し背の高い男性がいた 
私達のテーブルの横に立つ男性は
今、一番会いたいけどここでは会いたくない人
「二人は同じ会社で知っていると思うけどT大の友人の高宮」
山下さんが調子良く紹介し私の隣の席に座る
樹はこんな場所で私に会うとも思っていなかったのか呆然としている
亜美も驚いてはいるけど、私ほど動揺はしていなかったので笑顔で
「席替えでもしませんか?」
「俺は明日美ちゃんの隣に座りたいの」
何も知らない山下さんは無邪気に笑顔で言う
樹はシラッて普通の顔をして亜美の隣に座る
「高宮、明日美ちゃんと亜美ちゃんの事は知っているのか?」
「ああ」
「自己紹介はなし。明日美ちゃん彼氏と別れそうなんだって。だから俺立候補しようと思って」
山下さんの言葉に固まる
だって事情は知らないにしろ目の前にその彼氏がいるのだから
樹さんは自分の事を言われている素振りも見せずドリンクメニューを見てる
ここに来てから一度も私と視線が合わないのは気のせいだろうか?
それより今まで私と音信不通
ここに来たと言うことは山下さんとは連絡が取れていたってこと?
例え連絡が取れない事を許したとして帰国してすぐ会いに来るのは彼女である私の元じゃないの?
なんで女性がいる飲み会?
普通、ありえない
それとも私の事を『愛してる』って言ったことは偽りで
私はキープ。他にが本命がいる?
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