breath
立ち上がるとまだふらつくため20分ほど個室に篭る
その間に亜美から返信が来て
【了解!お大事に】
と淡泊な内容
きっと私がいない方が山下さんにアタックしやすいのだろう
もしかしたら私が気をきかせて帰った
それとも樹から逃げた
亜美はそう考えているはず
体調が悪いとは悟られていない
私は少しふらつきが落ち着いた頃そっと店を出る
「明日美」
亜美の声が聞こえる
「どうしたの?まだ店にいたんじゃ」
「せっかく明日美が席を外してチャンスを作ってくれたのに。主任はともかく山下さんまで」
不機嫌な亜美の顔
体調が悪いのはバレていないよう
「ゴメン。役に立てなくて。じゃあ」
この後三人は二次会にでも行くだろう
早く自宅に帰りたい私は踵を返して駅に向かおうとする私
「ちょっと待ちなさいよ」
亜美が私の腕をガシッと掴む
「ごめん本当に体調悪いの」
亜美の手を振り払おうとすると
「その蒼い顔を見たらわかるわよ。主任も気づいていたから探しに明日美を追いかけて行ったわよ。ちなみに山下さんも」
そっと逃げようと思っていたのに失敗
「二人が戻って来るまで待ちなさい」
亜美は私の体調を気遣う素振りもなく携帯を取りだし誰かに連絡している
たぶん山下さんだろう
口調でわかる
そして機嫌が悪そう
私が絶好の機会を奪ったから?
「亜美、ゴメンね」
とりあえず謝るけど亜美は何も言わない
確実に怒らせてしまった
それからすぐ山下さんと樹が息を切らして戻って来る
走って来たんだ
私のせいで申し訳ない
「ゴメンなさい」
とりあえず謝るけど、辛すぎて目に涙が溢れた
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