breath
一瞬、何がどうなっているのかわからなかったけど、たぶん私がうたた寝をしている間に行き先を変更したのだろう
私は樹に言われるがままに実家の玄関に入る
お母様が出迎えてくれた
「明日美ちゃんと一緒。私はてっきり山下君と一緒だと思っていたわ」 
「山下とは会った。明日美は偶然そこで拾った。彼女の家に今日はここで泊まると連絡を入れてくれないか?それから客間を使う」
「了解。社長は書斎よ。早く行きなさい!」
樹は私を置いて2階に上がって行ってしまう
たぶん早急な打ち合わせなのかもしれない
話をしたかったのに
「樹は時間がかかりそうなのでリビングで待ってて。客間の準備して来るし」
「すいません」
お母様は2階の客間私は一階のリビングに向かう

「顔色が悪いけど体調が悪い?」
背後から声がしたので振り向くとお母様が客間の準備が終わって戻って来た
「少し飲み過ぎて」
「お番茶入れるわね」
キッチンに向かう
客間を準備したということは私はここに泊まる
大きな声で言い合いすることはできないか
そんな事を考えると溜息しか出ない
憂鬱な気分になる
ネガティブ感情満載だ
こんな時に話をしても絶対うまくいかないのはわかっている
でも

お母様が温かいお茶を運んできた
「体調が悪そうだからお番茶にしたわ」
お茶請けに梅干しも添えてある
「今回は明日美ちゃんには会わないって言っていたのにね。我慢できなかったのかしらあの子」
お母様の話に固まる私
会うつもりがなかった?
こんな距離が近いところにいるのに
樹は私よりも
脳裏をかすめるのはあのベッドの残骸
私の事なんかどうでもいいんだ
「だから連絡がなかったんですね。山下さんにはするのに」
「明日美ちゃんでもヤキモチをやくのね。もっドライでクールな子だと思っていたけど」
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