breath
「そんな事を言われるのは初めてです」
「そう?じゃあ、そうなれるように心掛けて」
「心掛けですか?」
「樹と結婚したいのならね」
そう言い微笑むお母様
私の心を見透かされているよう
お母様はきっと知っているんだ
私が樹に対して不安を感じていること
そして別れる事も考えていることを
私は何も答えず微笑み返しす
それから私は2階にある客間に向かう
『樹と社長の話は長引くから今晩は期待しないように』とも言われた
突然ここに来た私にお母様は不信感を持っている?
持たれても仕方ないか
こんな様子なら一人で帰ればよかった
そうだ帰ろう
歩いて帰っても徒歩10分
リビングに戻ろうと階段に行くと社長の書斎から怒鳴り声が聞こえる
私はここにいてはいけない
鞄を握りしめ階段を降りようとした時、コーヒーを書斎に運ぼうとしているお母様と目が合った
お母様は軽く微笑み階段を上る
そんな私達に気付かず書斎からの言い合いの声はヒートアップ
お父様が一方的に怒鳴っているのではなく樹も言い返して自分の意見を言っている
2階の踊り場に来たお母様は私に何も言わず、書斎のドアをノックして部屋に入る
私は呆然とお母様の後ろ姿を見るだけ
コーヒーを置いたお母様はすぐ出てきて私に目配せをし階段を降りるように促す
「うるさかった?」
首を横に振る
「帰るの?」
首を縦に振る
「樹の事で何か思うことがあるのよね?」
「はい」
お母様は微笑むだけ
それ以上何も言わなかった
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