breath
考えるのは樹のことばかり
全部投げ出して
自分から逃げ出したのに
あの時は絶対後悔しないし苦しみから逃れることができると思っていた
でも現実は・・・過去を振り返り後悔ばかりしている
あの時もっと冷静になればこんな選択肢を選ばなかったのに
でも選んでいなかったら、きっと会社で松本さんに虐められていてクヨクヨしていたはず
病気だって再発していたかもしれない
子会社の時のこともあるから、きっとこれが限界
自分に言い聞かせてるけど、やはりあの好待遇を捨てたのはもったいなかった
松本さんが、人を蹴落としてでも残ろうとする気持ちもわからないではない

伯父さんの家には先代の祖父もいるのでちょくちょく顔を出している
体調が悪く入退院を繰り返しているせいか、私が京都に来たことを喜んでくれている
だから毎日、祖父の顔を見に伯父さんの家に理由をつけて行っている
伯父の自宅は8階建の自社ビルで1階は店、2階~5階は工場や事務所
6階~8階は自宅で祖父の部屋は6階にある
今日も散歩の帰りに寄るけど祖父は不在
工場に行き指導をしているのだろう
工場に行き職人の指導を生きがいにしているようだ
私は祖父に来た事を告げに工場に向かう
「こんにちは」
工場に入り職人さん達に声をかけると
「明日美ちゃん来ていたんだ」
「時間があるうちに顔を見せないと、仕事が始まると難しくなるし」
「まだ、就職決まらないんだ?」
「歳も歳だし。派遣にでも登録しようかなって考えている」
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