breath
本当は正社員が希望だけど今の私にはハードルが高そう
とりあえず収入を得る方法を現実に考えた方が良いかなって考えていた
「父さんやじいちゃんと話していたんだけどうちの店で働かない?社員でもバイトでもどちらでも良い。取りあえずせ、年末年始のバイトだけでも頼めないかな?」
「私で良いの?」
「ネコの手も借りたい時だから」
伯父さんの和菓子屋は本店だけではなく地域のショッピングセンターにも何店舗か出品していてそれなりに繁盛している
取りあえず私は店舗の販売を手伝うことになり、商品やその説明、包装の仕方を教えてもらいいざ店舗へ
年内は本店で修業し年が明けたらヘルプで支店に行くらしい
頼られて嬉しいけど、覚えることが沢山ありプレッシャーに負けそう
でも働けるってことが、こんなに新鮮に感じるなんて新入社員で入社した以来だな
そんなことを思いながら店舗に立ちだした
店で働きだして思ったことだけど、和菓子は奥深い
羊羹に一粒小豆が入っている
これは月を見立てたものらしい
生菓子も季節によってラインナップが変わり、それぞれ意味を持つ
今はお正月前なので味噌餡の入った花びら餅が並んでいる
お客様はこのお菓子を見る度『もう、お正月なのね』と言い購入していく
他の店員さんは日常で当たり前のことなんだけど、私の中では新鮮
日々こなすことで精一杯
いつのまにか、クヨクヨ考えることも忘れるぐらい多忙だった
夕食は毎日伯父さんの家で食べている
一人だったら食べないかコンビニ弁当
本当に有難い
食事が終わり片付けを手伝ったあとソファーでくつろいでいる私に、靖くんは冷えた缶ビールを持って来てくれる
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