breath

｢俺もこの前高宮に会ったけどそうは感じなかった。顔は痩せて少し疲れ気味だけど普通。アイツから誘ってきたから珍しいとは思っていたら、明日美ちゃんの行き先を知っているのなら教えろだって。らしくなく焦っていたよ｣
｢山下さんは私の居場所教えたのですか？｣
｢教えるわけないだろう。明日美ちゃんが覚悟を決めてやっていることなのに。アイツも自分の力でなんとかしたら良いよ｣
｢もしここにたどり着けることができるのなら、アイツの話だけでも聞いてやって。経営戦略室に配属されて多忙極まりないみたいだし」
経営戦略室？
そんなところに配属ですか？
、また寝る間を惜しんで仕事に励んでいるのが想像できるし、私を探す時間なんてないだろう
取締役就任というニンジンをぶら下げて、社長にプレッシャーをかけられているのが安易に想像できる
「樹が元気ならそれで良い。さっさと私を忘れて新しい彼女でも作ってその人と結婚したらいいのよ」
私の本心のはずなのに、なぜか目から涙が溢れ出す
「ごめんね。久しぶりの飲み会だったら嬉しくて涙が出てきちゃった」
誤魔化し方が取って付けたようでみっともない
私は樹から逃げたのだから、彼がこれからどうなろうと私には関係ない

「そういえば、秘書課の松本さんはどうなったの？」
少し落ち着いてから聞いてみた
私とのトラブルが加藤専務にバレていなければいいんだけど
「年明けに飛ばされるらしいわよ。子会社に」