breath
そして樹の唇を私の唇に押し当てる
いつもとは違い強引に
そして力強く激しい
彼にされるがまま抵抗もできないくらい彼を受け入れている
嫌ではない
違う、そうされているのが嬉しいから受け入れているんだ
唇が離れて、お互いに見つめあうけど言葉を口に出すことはしなかった
そんな私に樹は優しく微笑み、ポケットから何かを取り出した
それは3年前にもらった婚約指輪
樹がいなくなってしばらくしてから母を通じて高宮家に返してもらったもの
樹は私の左手の薬指に指輪を入れた
「本当は新しいものを用意しようと思ったんだけど、俺はあの時からやり直したいんだ。だから敢えてこれにした。俺の気持ちは以前、これを渡した時と何も変わらない。あの時より、一層深く愛している。だから結婚しよう」

樹からの突然のプロポーズ
今日、朝起きた時
夕方、樹の姿を見た時
こんな展開になるなんて想像しただろうか?
こんな最悪な事をする私なのに、樹はこんな私で良いのだろうか?
そして指輪を薬指にはめてくれたのに、あえて今ノーの返事を言う?
そうしたら、もう二度と樹とは会うこともないだろうし、このご縁も全て無くなるだろう
「こんな私で良いの?」
私の目は樹のサプライズで驚いてしまい潤んでいる
その目で樹の顔をみるけど、彼はいつもの優しい微笑みを私に漏らす
「当たり前だろう。明日美が良いから、明日美と結婚したいから必死の思いで探したんだ。もし明日美に拒否をされたら、俺は一生、誰とも結婚しないよ」
そこまで言いますか?
こんなにも樹に思われてる
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