breath
でも、流されて良いの?
とか拒否をする理由を言えないくせにグズグズ悩んでいる自分
それ以上、返事ができない自分に樹は
「じゃあ、そういう事で」
と話を締めくくり、応接室から出て行った
たぶん伯父さんの所に行ったのだろう
数分後には伯父さんと樹が部屋に入って来て
「樹くんがこれから帰るから、明日美送ってやりなさい」
これから帰る?
あっ、そうか今日は日曜日
明日から仕事だ
時計を見たら、もうすぐ午後7時になるところ
今から出れば最終の新幹線には余裕で間に合う
私は伯父さんの指示通り、樹と二人で店を出た
「突然、思い立って京都に来たんだ。明日美のお父さんのお土産でもらった和菓子の包みの住所にたまたま立ち寄ったたら、店頭に明日美がいたんだからさすがに驚いたよ」
その話を聞いて、ここを遠回しに教えた人がお父さんなんて
それなりに、信用していたのに
「誰かから私の居場所を教えてもらったんじゃないんですか?」
「誰も俺には教えてくれないよ」
「でも、和菓子の住所を見てって」
「それはたまたま。お土産の和菓子が明日美のお父さんの実家だと母から聞いて明日美のルーツを見てみたいって思って衝動的にここに来た。まさかここにいるなんて、思いもよらなかったよ」
「お父さんから聞いたんじゃないんですか?」
「明日美のお父さんにも聞いたけど、娘との約束が優先で俺の願いは聞いてくれなかった。そして興信所を使うことは禁止されたよ」
そうなんだ
でも結果的に、お父さんは樹に私の居場所のヒントを渡した
父は何を考えているのだろう?
「明日美はこの近くに住んでいるの?」
「ここから徒歩五分のところのワンルームマンションに」
「あと30分ぐらいなら時間があるから見てみたい」
< 621 / 657 >

この作品をシェア

pagetop