breath
翌週の週末
樹は私を迎えに京都に
急にまったので、退去手続きは来月
改ためて来なければいけない
樹と店舗兼住居の伯父さんの家に行き祖父にご挨拶
終始祖父はご機嫌で
自分が元気なうちに私の花嫁姿を見たいと何度も樹に頼んでいた
樹はできるだけ早く式を挙げる予定だと答えている

そして、二人で新幹線に乗り戻る
結果的には2ケ月弱の旅行のような家出
あの時は真剣にこの地でやり直そうと思っていた
思うようには事は進まない
それだけは確実に痛感
そんな2ケ月
一生忘れないと思う

久しぶりに訪れたこのマンション
エントランスに藤崎さんが立っていたり、初めて二人で生活した懐かしい思い出がたくさん詰まっている
私達はここから始まった
最後に来たのはいつ?
もう思い出せない
玄関に入ると懐かしい匂い
リビングに入ると何も変わっていない
私達は確実に変わっている
「何を考えているの?」
「部屋は何も変わらないけど、私は変わってしまったなって」
「変らない人間なんていないよ。でもね一つだけあの頃と全く変わらないものがあるんだ」
「何?」
「俺が明日美を好きだっていう気持ち」
樹の言葉を聞いて私の目が見開いた
樹はそんな私を見逃さなかったのか、チュッて軽く私のおでこにキスをする
「もー樹ったら!!」
おどけている私だけど、再会してからの樹はおでこ以外にキスをすることはない
これは何を意味するのだろう?
聞くにも聞けずモヤモヤしている自分
相変わらず情けない
樹は私の手を引っ張り以前私の部屋だった場所へ
「今回はここを寝室にした」
「ベッドは時間がなかったけどとりあえず新調した。ただ俺は仕事が忙しかったから俺の母親と明日美のお母さんに頼んだんだ」
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