breath
私はそんな樹を、ぶつけてくる感情と共に受け入れる
キスは勢いだけ
に私の唇を割り口の中に侵入舌を絡ませる
唾液が絡まる音だけがする寝室
樹の身体がギュッと私の身体を包み込み、もう抵抗できないぐらい潰れてしまうぐらい力強さ
「この胸は私だけの場所って思っていいの?」
「俺が浮気をすると思っているってこと?」
「浮気するの?」
「するわけないだろう。明日美と知り合ってからは誰ともつきあっていない」
「でも藤崎さんが」
「あれはかぶっていない。それだけは言い切れる」
「本当?」
「当たり前だろう。これから結婚するのに嘘なんかつくはずないだろう?それよりも明日美のほうが」
えっ、私?
聞きますか?
浮気はない
でも未遂はあるわけで脳裏に浮かぶのは専務の顔
ここで正直に言うのか墓場まで持っていくのか
「聞かない!忘れてくれ」
キスで私の唇を塞ぐ
私と専務が何かあったと思っている
専務が何か言ったのかもしれない
聞かれていないし言うのは止めてここは墓場まで持って行く
狡いけど
惚れられたものの強み?
唇が離れたとき『これで、やっと明日美が抱ける』ってポツリと樹が言った
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