breath
私はその言葉を聞いて、咄嗟にシャワーを止める
「何をするの?」
樹はニコニコして『想像にお任せします』とか訳のわからないことを言っている
恋人に戻ったごっこ
恋人の時って何をしていた?
3年前だけど、遥か昔のように
樹はグイって私の腕を掴んで薔薇風呂に入り、樹を背もたれ状態で私を体育座りをさせる
「薔薇風呂気に入った?」
「お姫さまになったよう。本当にありがとう」
「喜んでもらって嬉しいよ」
そう言い、樹は背後から回した腕にギュット力を入れて私を引き寄せる
私は彼の肩に顔をのせ、首筋に軽くキスをした
薔薇の香りをした熱気で少し汗ばむ樹がいつもと違い、すこしセクシーに見える
これは、いつもと違うシュチエーションだから?
結婚してからは樹の存在が当たり前すぎて男を感じることが確実に減少
私がそう思っているってことは、確実に樹もそう思っているはず
家にいる時はすっぴんで眼鏡をかけていて髪の毛もボサボサ、確実に女を捨てている
あっ、そうか
樹は釣った魚に久しぶりに餌をやっているんだ
そうしないと干からびるから
納得、納得
脳内で自分一人で完結している私
樹はその先に進むわけもなく、ギュット抱きしめ続ける
昔の樹だったら、私が首筋にキスをしたら喜んでその先に進んだよね
やはり、樹もそういう事には冷めてきているか
じゃあ【恋人に戻ったごっこ】って何?
それは、久しぶりに子供を抜きにしてスルってことだと思ったけど・・・違うのかな・・・
お互い30歳を超え、20代よりは確実に性欲は減少しているような
いや、回数は確実に減っている
裸の私を前にして、欲情しない樹
なぜかショックを受けている私
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