breath
あれからどれくらい時間が経っただろう?
鍵が開く音がする
リビングに向かってくる足音
だんだん音が大きくなる
私はソファーでうずくまったまま
この足跡は樹さんってわかっているけど泣いた後の悲惨な顔を見られたくない
リビングのドアを開けた樹さん
ドサッととカバンが落ちる音が聞こえる
「どうした?」
慌てて私に駆け寄る
この顔を見られたくないから動けない
「大丈夫です。寝てただけです」
咄嗟に言い訳
でも樹さんには通じない
無理やり顔を上げられる
そこには泣きはらした無残な顔
「何かあった?」
首を横に振る私
何もなかったのは事実
あったのはドアフォンに写った女性を見て動揺しただけ
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