ーーピッ...ピッ...ピッ。


一定のテンポで刻む電子音と私の鼓動のBPMはちっともリンクしない。

「っ、はあ」

どくんどくんと波打つ鼓動。

時に揺れてBPMを変えていく。

おかげで呼吸も変わってしまう。

ダメだと、ダメだと、ダメだとわかっていたとしても、管を手にする。

その今はまだ掴んでいるだけの管の先には私と同い年のあどけない少女がまぶたを閉じている。

土井 笑璃。

白くて清潔なシーツの上にばらまくようにして乗せられた黒髪。

整った顔立ち。

今は発されることがないけどきれいな声。

羨ましいものを全部、全部、持っていった。

双子なのに、ちっとも平等じゃない。

何もかも、笑璃のせいだ。

「...笑璃のせい、だよ...え、みりの...」

泣きながら、管をぐっと握った。

その管は笑璃の喉に設置されている。

グッと引っ張った。

当たり前だが子供の力じゃ抜けない。

喉に酸素吸入器を設置するということは、相当な状態だ。
簡単に子供の力で抜けたら溜まったもんではない。

もっともっと力を入れって引っ張る。

まだまだカブは抜けません。

そんな有名な物語のフレーズが出てきて、少し笑いそうになる。

でも私はカブと対峙している気分だった。

少し引っ張り続けていると、緩んだきがした。

これで緩んだから自然に抜けて行くだろうと、確信した私は静かな病室をあとにした。

走り出すと、声がした。
笑璃のきれいな可愛い声。

「茉優ちゃん」

うるさいなぁ。私の思ってたこと知らないくせに。

そう思って、罪悪感を振り切った。

「茉優ちゃん、違うよ」

何がよ。うるさいな。
笑璃のせいだよ。

「いいから病室戻ってよ!」

私が悪いよ?だけど捕まりたくないんだよ。
笑璃のせいだよ。

「...............っ」

キイィィンと耳鳴りがしてうずくまった。

笑璃の病室の方向へ振り返ると、看護師さんが一人病室に入っていった。

ドキンと心臓がはねた。

だけど忘れるように、走り出した。

気がついたら笑璃の声はしていなかった。

だけど。

「きゃああああっ!」

その看護師さんの声がした。
悲鳴だ。

私の思惑通りになった。だけど高揚感も恍惚感も何も無かった。

少し胸がいたんだ。

だけど見えないふりをした。
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