大事にされたいのは君
自惚れていた。頼りしていい存在が私に居る訳が無かった。こんな私が関わっていい相手ですらない。私は、大切な人の邪魔にしかなれない。不幸せにしか出来ない。必要とされなくて当たり前だ。私が居ない方が、皆幸せになれるのだから。
足元が崩れ落ちていくようだった。今までに作り上げられた土台は全て幻で、私は今どこでどうすればいいのか、どこであったら立っていられるのか、何も分からなくなってしまった。どこに存在すればいいのだろう。どこにも、私は、どうすればーー…
くるりと、買い物袋を手にしたまま私は踵を返した。
何も考えられなかった。ただもうここには居られないという想いだけが足を動かした。ここから離れなければ、離れなければとひたすら足を動かして、無意識に居場所を探して、そんな場所一つも思い当たらなくて、慣れた道をいつも通りに歩くうちに学校に着いてしまった。意識せずに歩きながら戻ってきてしまっていたのだ。確かに私に思いつく場所なんて、兄の家かここしかない。
「……何なんだろう」
私って。
「どうせここにも居場所なんてないのに」
もし私が居なくなったとして、クラスに影響はあるのだろうか。その日は心配してくれるかもしれない。けれど結局私の代わりは見つかって、何事もなかったかのように忘れ去られていく。私が居て困る人が居ないように、私が居なくて困る人もいない。私はどうせクラスでもそんな存在だ。迷惑を掛けていないだけマシ…いや、迷惑を掛けている人が、居る。
「……瀬良君」
頼りにする人全てに迷惑を掛けているだなんて。迷惑だって分かっているのに、また迷惑を掛けたいだなんて。
「…会いたい」
寂しい、辛い、苦しいーー
こみ上げる涙がこぼれ落ちる前にここを離れようと思ったのに、足が動かない。